技術資料
シート防水層の諸性能に関するもの
高日射反射率防水
高日射反射率防水とは、日射反射率の高い顔料を防水層の素材に含有しているもの又は日射反射率の高い顔料を有した塗料を防水層の仕上げとして施すものです。
KRK規格「高反射率防水シート」では近赤外域における日射反射率50.0%以上としています。
太陽光のエネルギー分布
太陽光エネルギーの約50%が赤外線領域の熱エネルギーです。
2500nm以上の赤外線は、地表にはほとんど到達しません。
- 高反射・・・熱源となる短波(近赤外線)を反射することで採用部位の表面温度を抑えます。
- 断 熱・・・熱伝導のスピードを遅くすることで 熱流出入量を抑制します。
(1)近赤外線領域を効率的に反射
- 表面温度の上昇を抑制
- 建物内部温度上昇の抑制
- 建築部材への蓄熱を抑制
- 夜間放熱を緩和
- 冷房負荷減少により冷房エネルギーの抑制
(2)防水層の熱劣化抑制による長寿命化
赤外線ランプ照射による温度測定 250W
高反射率防水シート表裏面温度の比較(練り込みタイプ)
合成ゴム系シート高反射率塗料仕上げ
(表面温度測定結果(ライトグレー(N6近似)))
表面温度(℃) | ||
汎用塗料 | 高反射塗料 | |
初期値 | 23 | 23 |
10分後 | 61 | 53 |
20分後 | 73 | 61 |
30分後 | 76 | 63 |
改質アスファルト露出断熱工法
塩ビ系高反射率シート断熱工法
高反射率防水シート施工例
高反射率塗装施工例
- 反射した赤外線の一部は大気および地表面へ拡散しますが、大部分は宇宙空間へ反射されます。
- 赤外線の反射は、「熱劣化」防止にも効果があり、防水層の耐久性の向上につながります。
一般的に防水シートは、温度の上昇とともに劣化が促進されますが、赤外線を反射することによりシートの表面温度の上昇が抑制されるため、耐久性の向上につながります。 - 太陽光の反射は、勾配屋根でも効果がありますが、近隣への反射光による眩しさなどの注意が必要です。
- 冬季の室温にもほとんど影響がありません。
- 表面に汚れが付着すると「反射率」は低下します。したがって、長期にわたり高反射性能を維持するためには清掃や洗浄などの定期的なメンテナンスが必要です。
高反射防水シートのKRK規格
合成高分子ルーフィング工業会規格
規格番号 KRK S-001 高反射率防水シート
グリーン購入:高日射反射率防水適合表
平成22年4月からグリーン購入法特定調達品に高日射反射率防水の採用が始まりました。
当工業会会員各社の対応する工法と仕様を「公共建築工事標準仕様書」及び「公共建築改修工事標準仕様書」別にまとめ次に掲載します。
工法名及び仕様記号は代表例を示しています。詳しくはメーカーのホームページをご覧ください。
平成20年12月制定
JIS K 5602「塗膜の日射反射率の求め方」により近赤外域における日射反射率50.0%以上とする。
近赤外域における日射反射率が50.0%以上であること。
本項の判断の基準の対象とする高日反射率防水は、日射反射率の高い顔料が防水層の素材に含有されているものまたは日射反射率の高い顔料を有した塗料を防水層の仕上げとして施すものであり、建築の屋上・屋根等において使用されるものとする。
日射反射率の求め方は、JIS K 5602に準じる。
CASBEE® - 新築(簡易版)2010年版 高反射シート防水の評価点化
1.CASBEE®
CASBEE(建築環境総合性能評価システム)とは、建築物の環境性能を総合的な視点で評価するための手法で、(社)日本サステナブル建築協会内に設置された建築物の総合環境評価研究委員会及び傘下の小委員会がその主体的運営にあたっています。
CASBEE には企画/新築/既存/改修の4つの評価ツールがあります。
CASBEE-新築(簡易版)より抜粋
評価結果 レーダーチャート
屋根面対策面積率の計算とポイント数
評価者 | 日射反射率 | 長波放射率 | 推進事業、規格等 |
---|---|---|---|
社団法人日本塗料工業会 | 明度L’値が40.0以下の場合は、近赤外域における日射反射率が40.0%以上であること、明度L’値が40.0を超す場合は、近赤外域における日射反射率(%)が明度L’値の値以上であること。 | ― | JPMS27耐候性屋根用塗料(2009年) |
合成高分子ルーフィング工業会 | 近赤外域(波長:780nm~2500nm)において50.0%以上 | ― | KRK S-001 高反射率防水シート規格(2008年) |
東京都 | 50%以上(灰色)第三者機関にて測定 | ― | クールルーフ推進事業(2006年) |
注)長波反射率は、塗料、防水シートに関しては、何れの製品も0.9程度であり基準値が設定されていないが金属屋根などの場合には小さな値になる場合が多いため注意する必要がある。
CASBEE-新築(簡易版)2010年版P-207より抜粋
2.温熱環境悪化の改善
「LR3 敷地外環境」のうち「2.地域環境への配慮」の中で「2.2 温熱環境悪化の改善」において、緑化と高反射材料が取り上げられており、屋根面の緑化等と高反射材料の選定により敷地外への熱的な影響を低減するという観点で評価ポイントが加算されます。
KRK では工業会規格として、2008 年に「KRKS-001」として高反射率防水シートの規格値を定め、環境省、国土交通省等関係省庁へのPR を進めておりました。CASBEE 2010 年版では補助資料に(社)日本塗料工業会規格とともにKRK 規格が紹介されています。
高反射材料の経年による性能変化について、CASBEEでは補助資料の項に2 年間の屋外曝露試験後の日射反射率が初期値の80%以上が望ましいとしていますが、壁など汚れが流れ落ちやすい環境で使用される塗料とフラットな屋根で使用される防水材との使用環境の差異についてはまだ議論のあるところです。
高反射材料各メーカーの材料性能値については、各社ホームページまたは環境省のホームページに掲載されています環境技術実証モデル事業の項をご参照下さい。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/ecoschool/detail/1298014.htm
用語解説
日射反射率の高い材料・高い反射率の材料日本塗料工業会規格JPMS27に適する高反射率塗料、合成高分子ルーフィング工業会規格 KRKS-001 に適合する高反射率防水シートまたは同等の材料