仕様と施工

技術資料

シート防水層の諸性能に関するもの

シート防水の耐用年数

1981 年~1984 年に、防水層などを含めて、建築物全般について、耐久性を向上させる研究が建設省(現国土交通省)において実施され、「建築物の耐久性向上技術」 (以下、耐久性総プロ)がとりまとめられました。防水に関しては 1987 年に発刊の「建築防水の耐久性向上技術」において、次のような耐用年数を推定する方法が発表されています。その後、2012 年に「建築物の長期使用に対応した材料・部材の品質確保・維持保全手法の開発に関する検討委員会」(以下、第二耐久性総プロ)の外装分科会防水 WG において、現在使用されている防水層種別および耐用年数の見直しが実施され、各種防水層の耐用年数はリファレンスサービスライフとして表 1a に示す年数に見直されています。

耐用年数の推定方法

1.推定耐用年数Y

推定耐用年数Yは、次式によって求める。

Y=Ys×s×a×b×c×D×M

Ys:表1によって定められる標準耐用年数
 s:表2によって定められる防水工法の選択係数
 a:表3によって定められる設計係数
 b:表4によって定められる施工係数
 c:表5によって定められる施工時の気象係数
 D:2.によって定められる劣化外圧力係数
 M:3.によって定められる維持保全係数


表1 屋根メンブレン防水の標準耐用年数 Ys(耐久性総プロ)
防水層の種類 工法の種類 標準耐用年数
押えアスファルト防水 A-RA2,A-RB2 17年
露出アスファルト防水 A-RC2,A-RD2,A-RE2 13年
押えシート防水、露出シート防水 S-VR3*1,S-NR2*2,S-PV1*3,絶縁PV*4, 13年
露出ウレタン塗膜防水 L-PU2,特殊PU 10年

(注)*1~*4:現在では次の工法となる。
*1:加硫ゴム系シート(1.2mm)による露出接着工法
*2:非加硫ゴム系シート(2.0mm)による露出接着工法
*3:塩化ビニル樹脂系シート(2.0mm)による露出接着工法
*4:塩化ビニル樹脂系シート(1.5mm)による露出機械的固定工法


表1a.屋根メンブレン防水のリファレンスサービスライフ Ys(第二耐久性総プロ)
防水層の種類 保護/露出の区分 リファレンスサービスライフ
アスファルト防水  保護防水 20年
露出防水 15年
改質アスファルトシート防水  保護防水 20年
露出防水 15年
合成高分子系シート防水 露出防水 15年
ウレタン塗膜防水 露出防水 15年
FRP塗膜防水 露出防水 15年

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表2 防水工法の選択係数 s

屋根構法

下地

備考
アスファルト防水

A-RA2

A-RB2

A-RC2

A-RD2

A-RE2

1.0

1.2

1.0

1.2

1.0

1.0

1.0*

1.0*

1.0*

1.0*

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

A-RA2~A-RE2の代わりにA-RA1~A-RE1のグレードを使用する場合は、係数1.0を1.2と、1.2を1.4と読み替える。
シート防水

S-VR3

S-NR2

S-PV1

絶縁PV

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

0.6*

0.6*

0.6*

0.6*

0.8*

0.8*

0.8*

0.8*

0.8

0.8

0.8

0.8

0.6

0.6

0.6

0.6

0.8

0.8

0.8

0.8

0.8

0.8

0.8

0.8

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

S-VR3,S-NR2の代わりにS-VR1~S-NR1のグレードを使用する場合は、係数1.5を乗じた値を採用する。
塗膜防水

10L-PU2

11特殊PU

1.0

1.0

0.8

1.0

0.8

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

1.0

L-PU2の代わりにL-PL1のグレードを使用する場合は、係数1.2を乗じた値を採用する。

(注)*緩衝材敷きの上に抑え層。


表3 設計係数 a
設計監理 設計図書

1.3

1.2

1.1

1.1

1.0

0.8

0.8

0.7

0.5以下

表4 施工係数 b
施工技術 設計管理

1.2

1.1

0.9

1.1

1.0

0.8

1.0

0.9

0.7以下

表5 施工係数 c
季節 係数

雨・雪季

寒冷季

一般季

0.8

0.9

1.0

2.劣化外圧係数Dの算定

劣化外圧係数Dは、次式によって求める。

D=d1×d2

ここに、1:表6によって定められる断熱係数
2:表7によって定められる地域係数

表6 断熱係数 d1
防水層の種別 工法 断熱材
アスファルト防水 押え工法
露出工法
1.2
0.9
1.0
1.0
シート防水 押え工法
露出工法
1.2
0.9
1.0
1.0
塗膜防水 露出工法 0.8 1.0
表7 断熱係数 d2
防水層の種別 工法 一般地 寒冷地
亜熱帯地
アスファルト防水 押え工法
露出工法
1.0
1.0
1.0
0.9
シート防水 押え工法
露出工法
1.0
1.0
1.0
1.0
塗膜防水 露出工法 1.0 0.9
断熱材の位置

3.維持保全係数Mの設定

維持保全係数Mは、表8の維持保全仕様に応じて設定する。

表を横にスライド >
表8 維持保全仕様に応じた維持保全係数 M
防水工法 維持保全仕様
No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6 No.7 No.8
アスファルト防水
シート防水
押え工法
1.0 0.9 0.9 0.8
露出工法
1.0 0.9 0.9 0.8 0.8 0.9 0.7 0.8
ウレタン塗膜防水露出工法
1.0 0.9 0.9 0.8 0.8 0.9 0.7 0.8
維持
保全
係数
清掃(周期0.5年)
点検・保守(周期2年)
再塗装(周期4年)

(注)○:実施する、―:実施しない。


出典 建設大臣官房技術調査室 監修(財)国土開発技術センター 建築物耐久性向上技術普及委員会 編 “建築防水の耐久性向上技術”
独立行政法人建築研究所 建築物の長期使用に対応した外装・防水の品質確保ならびに維持保全手法の開発に関する研究