仕様と施工

技術資料

防水シートに関する規格や防水層の性能評価方法など

付6.メンブレン防水層の耐久性能試験方法(JASS8)

6.1 耐久性能試験項目と対象とする性能評価試験項目及び試験体

各耐久性能試験項目と対象とする性能評価試験項目および試験体の組合せを表1に示す。
耐久性能試験項目 性能評価試験項目および試験体
熱劣化
へこみ、耐衝撃、疲労、ジョイントずれ、ずれ・垂れ、耐風およびふくれ
紫外線劣化
へこみおよび耐衝撃
水分劣化
ずれ・垂れ、コーナー部安定性、耐風およびふくれ
(仕上塗料、下地断熱材付きはそれを施工した試験体)
オゾン劣化
疲労試験用A形試験体(試験体は、下地亀裂幅を3mm開けその状態に固定し、直ちに試験に供する)または、ダンベル状1号形試験片(標線間距離40mmを56mmに伸長し直ちに試験に供する)。
相溶性
大きさ300×300mmのコンクリート板(特に支持がない場合は、JIS A 5304「舗装用コンクリート平板」に規定する。厚さ60mmの平板とする)に、試験の対象とする防水層のみ、または断熱材、保護仕上げ槽を施工し、所定の養生期間を経たもの。防水層、保護仕上げ層の施工にあたっては、試験体の1/2の範囲(150×300mm)ですべての層の間にはく離紙を挟む。

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耐久性能試験項目と性能評価試験の組み合わせ
耐久性能試験 耐久性能試験項目
熱劣化 紫外線劣化 水分劣化 オゾン劣化 相溶性
へこみ
露出・非露出 露出 露出・非露出 露出・非露出
耐衝撃
露出・非露出 露出
疲労
露出・非露出
ジョイントずれ
露出・非露出
ずれ・垂れ
露出・非露出 露出・非露出
コーナー部安定性
露出・非露出
耐風
露出 露出
ふくれ
露出 露出

6.2 熱劣化試験方法

(1)試験の目的

防水層の日射による熱に対する抵抗性を評価する。

(2)試験方法

空気循環式恒温槽を用い、表2に示す劣化条件下に、試験体を静置する。

表2 熱劣化試験条件
防水層の仕様 試験温度 試験期間
保護・仕上げがない場合又は仕上塗料 コンクリート下地 80℃ 112日間
断熱材下地 90℃
保護・仕上げ(コンクリート・砂利)がある場合
60℃ 112日間

ただし、熱により形状が保たれないようなアスファルト防水層は温度70℃で336日間としてもよい。
なお、試験装置は空気循環式恒温槽等を用い、試験温度は防水層表面で管理するとよい。耐風等大型の試験体の場合には、試験体を断熱材で覆い、電気ヒーターおよびファン等を用い防水層表面温度を試験温度で管理するとよい。

(3)評価方法

各性能評価試験方法(へこみ、耐衝撃、疲労、ずれ・垂れ、耐風、ジョイントずれ、ふくれ)に従って、健全及び劣化後各々の試験体について性能評価試験を行う。


6.3 紫外線劣化試験方法

(1)試験の目的

防水層の日射による紫外線に対する抵抗性を評価する。

(2)試験方法

オープンフレームカーボンアークランプ(サンシャインカーボンアークランプ)またはキセノンアーク光源を用いて、暴露試験を行う。劣化試験条件を表3に示す。


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表3 紫外線劣化試験条件
防水層の仕様 試験条件
ブラックパネル温度 紫外線照射量 試験片面への水噴射
保護・仕上げがない場合又は仕上塗料 63±3℃ 1,000MJ/m2
(300~400mm)
102分照射後、
18分照射および水噴射

(3)評価方法

各性能評価試験方法(へこみ、耐衝撃)に従って、健全及び劣化後各々の試験体について性能評価試験を行う。

6.4 水分劣化試験方法

(1)試験の目的

防水層の下地からの水分・アルカリに対する抵抗性を評価する。

(2)試験方法

循環式恒温水槽を用い、表4に示す劣化条件下に、試験体の下半分を浸せきして、上半分を水面上に出してを静置する。防水層表面側の、雰囲気温度は20℃程度の状態下とする。

表4 水分劣化試験条件
試験条件
試験方法 試験期間
50℃温水中に下地板の部分の下半分を浸せき 56日間

コーナー部安定性試験では立上り部分は綿布等を接触させ水槽の水分を供給する。耐風等大型の試験体の場合には、適当な大きさの水槽を用い、電気ヒーターおよび撹拌器等を用い、水温を試験温度に管理するとよい。

(3)評価方法

各性能評価試験方法(ずれ・垂れ、コーナー部安定性、耐風、ふくれ)に従って、健全及び劣化後各々の試験体について性能評価試験を行う。

6.5 オゾン劣化試験方法

(1)試験の目的

ゴム材料系防水層の耐オゾン性を評価する。

(2)試験方法

オゾン劣化試験装置を用い、表5に示す条件で、図2に示す試験体の下地に3mmの亀裂を入れ直ちに、試験槽に静置し暴露を行う。なお、材料のみで試験を行う場合はダンベル状1号形試験片を用い、標線間距離(40mm)を40%(56mm)まで伸張し直ちに試験槽に静置する。

表5 オゾン劣化試験条件
試験条件
オゾン濃度 試験温度 試験期間 下地亀裂幅
100pphm 40℃ 56日間 3mm

(3)評価方法

防水層に亀裂が生じたか否かについて10倍のルーペで外観観察を行う。

6.6 相溶性試験方法

(1)試験の目的

防水層を構成する材料および防水層に接して使用される保護・仕上げなど材料相互が接触することによって軟化や接着不良などの不具合が生じないかを確認するために行う。

(2)試験方法

試験開始前に試験体各層が必要な接着または絶縁状態にあるかどうか、軟化や変色などの異状がないかを観察する。異状がなければ以下の処理を行う。
図3に示すように、試験体に試験対象となる材料を適宜載荷をして接触させる。載荷状態のまま、表6に示す条件下に静置する。試験時間経過後、試験体に異状が生じたか外観観察を行う。

表6 相溶性試験条件
防水層の種類 試験温度 試験期間
保護・仕上げがない場合又は仕上塗料
(下地断熱材の有無にかかわらず)
温度80℃ 14日間
保護・仕上げ(コンクリート・砂利)がある場合 温度60℃ 14日間

載荷の程度は、防水層が通常受ける重量とする。例えば、コンクリートなど重量物のある保護層の場合は、少なくともそれに相当する荷重を加える。

(3)評価方法

試験防水層に異状が生じたか、外観観察を行う。



日本建築学会編「建築工事標準仕様書 JASS 8 防水工事」(2008年版)の参考資料1メンブレン防水層の性能評価試験方法及び参考資料2メンブレン防水層の耐久性能評価試験方法より重要部分を抜粋して掲載した。