仕様と施工

技術資料

防水シートに関する規格や防水層の性能評価方法など

付5.メンブレン防水層の性能評価試験方法(JASS8)

1.はじめに

(1)本試験法の適用範囲

本試験法は防水層の基本的な機能、すなわち水密性にかかわる項目をその適用範囲とする。

(2)性能評価試験を行う目的

本試験方法は防水層のなんらかの基準に照らしての合否を判断するための手段として作成されたものではない。当該防水層がどの程度の性能を持ってるかを明確化するためのものであり、建物、環境などから必要とされる条件に照らし、適切な防水設計のための基礎資料を得るために利用する。

(3)本試験を行うことによって得られる知見

 (a) 防水層として成立するかどうか
 (b) 建物、環境から必要とされる条件に対しどの程度のグレードに位置付けられるか。
 (c) どの程度の耐久性を期待しうるか。

(4)試験方法の構成と手順

本試験方法は2つのステップの項目から構成され、第1ステップの試験に合格したものについて第2ステップの試験を行う。
第1ステップでは、(a)防水層として成立するかどうかを確認する試験を行う。次いで、第2ステップでは、(b)防水層性能評価のための試験を行う。さらに、その性能の耐久性を評価するためには、(c)劣化負荷を与えた試験体について第2ステップの試験を行う。

2.防水層性能評価のステップ

表を横にスライド >
防水層性能評価               → 防水層耐久性能評価
第1ステップ   →
防水層として成立する
水密試験
第2ステップ
漏水直接建管項目
へこみ試験
耐衝撃試験
疲労試験
ジョイントずれ試験
ずれ・垂れ試験
コーナー部安定性試験
耐風試験

漏水間接欠陥項目
ふくれ試験
→ 劣化負荷
屋外10年程度以上の劣化条件
熱劣化
紫外線劣化
水分劣化
オゾン劣化
相溶液
→ 第2ステップ
第2ステップの各評価
項目の評価

3.防水層の性能評価試験

3.1 第1ステップ試験(水密試験)

(1)目的

防水層の水密性、特に通常対象としなければならない程度の複雑な部位・納まりにおける水密性を評価する。

(2)試験体

(3)試験方法

水深を10cm、30cm、80cmの3段階に設定した

試験条件(水深) 用途・適用箇所・仕様条件
10cm
勾配 1/20~1/50
露出防水層
パラペット等立上り部位のない納まりの場合(軒下、鼻先納め)
30cm
勾配 1/20~1/50
露出防水層
80cm
勾配 1/100以上
コンクリート等による重度の保護層の設置可能

(4)結果の表示

試験期間中に漏水のなかったものを合格とし、漏水のあったものは不合格とする。
1週間程度の水張り試験で十分な判定ができるかどうか疑問ではあるが、少なくとも1週間の連続した観察が必要であるという判断である。

4.第2ステップ試験

以下各試験項目は、前記第1ステップ試験(水密試験)で合格となった防水層を対象として実施する。
防水層の仕様・使用状況などによっては一部の試験項目を省略してもよい。

4.1 へこみ試験

(1)目的

防水層に局部負荷が作用する場合のへこみ抵抗性を評価する。

(2)試験体・試験方法

試験時の温度は20±2、60±2℃とする。各試験温度条件下に1時間以上試験体を静置した後、防水層の中央に直径30mmの綱球を置き、綱球の上から総量50Nの定荷重を24時間載荷する。その後、防水層の穴あきの有無を検査する。3体とも穴があかなければ載荷位置を変えて、順次150Nで24時間、250Nで24時間の載荷を行い、逐次防水層の穴あきを検査する。なお、穴あきの検査が難しい場合は水頭250mmの透水試験で漏水の有無を判断する。

試験体:防水層100×100mm、下地100×100mm(8mm厚フレキシブル版)
試験体数:3

(3)試験結果の表示

試験結果は下記の区分と試験時の温度条件を表示する。

区分
へこみ1:50Nの載荷で1体でも穴があいた場合
へこみ2:150Nの載荷で1体でも穴があいた場合
へこみ3:250Nの載荷で1体でも穴があいた場合
へこみ4:250Nの載荷で3体とも穴があかなかった場合

4.2 耐衝撃試験

(1)目的

防水層の衝撃に対する抵抗性を評価する。

(2)試験体・試験方法

試験体の支持方法は、図3の示す通り、砂上全面支持とする。試験時の温度は0±2、20±2、60±2℃とする。各試験温度条件下に試験体を1時間以上静置した後、図4に示す先端が半球形状を有するおもり(先端直径10mm、質量500±2g、鉄製)をその先端から防水層表面までの高さ0.5mの位置から試験体の防水層上に落下させる。1)。その後、防水層の穴あきの有無を検査する。3体とも穴があかなければおもりの落下位置を変えて、順次1m、1.5mの高さからおもりを落下させ、逐次防水層の穴あきを検査する。なお、穴あきの検査が難しい場合は水頭250mmの透水試験で漏水の有無を判断する。
[注] 1) おもりは試験体の防水層上に垂直に落下させる。

試験体:防水層300×300mm、下地300×300mm(60mm厚コンクリート平版)
試験体数:3
(断熱工法の場合、断熱材を下地とする。)

(3)試験結果の表示

試験結果は下記の区分と試験時の温度条件を表示する。

区分
耐衝撃1:高さ0.5mの衝撃で1体でも穴があいた場合
耐衝撃2:高さ1.0mの衝撃で1体でも穴があいた場合
耐衝撃3:高さ1.5mの衝撃で1体でも穴があいた場合
耐衝撃4:高さ1.5mの衝撃で3体とも穴があかなかった場合

4.3 疲労試験

(1)目的

防水層下地の結合部、または下地に発生するクラックの動きに対する防水層の抵抗性を評価する。

(2)試験体

試験体は、表1に示すように下地不連続部の形によってA型、B1型及びB2型の3種類とする。また、形状を図5に示す。試験体の数は3体とする。
[注]一般部を代表する防水層の大きさの目安は次による。

  • ・シート状材料を用いる密着防水層:幅100mm×長さ300mm(不連続部の片側で150mm以上)
  • ・点張り防水層:点張り間隔の2倍以上の幅×4倍以上の長さ、かつ幅100mm×長さ300mm以上とし、
    原則として長手端部を下地に固定する。
表1 試験体の形状
形状 下地の不連続部の形 対象とする下地の例
A形 下地板の表面中央部の幅方向に深さ約6mmのV形の切込みを入れたもの
現場打ち鉄筋コンクリート下地、プレキャストコンクリート部材、ALCパネルで目地詰めなどの処理を行うもの
B1形 下地板の中央部の幅方向に1mmの開口をあけたもの
成形品により構成される下地で接合部を目地詰めなどの処理をせず、しかもそのすきまの狭いもの、例えばプレキャストコンクリート部材、ALCパネルの長辺接合部など
B2形 下地板の中央部の幅方向に2mmの開口をあけたもの
成形品により構成される下地で接合部を目地詰めなどの処理をせず、しかもそのすきまの広いもの、例えばプレキャストコンクリート部材、ALCパネルの短辺接合部、断熱材の接合部など

(3)試験方法

A形試験体の場合は表2(1)、B形試験体の場合には表2(2)の試験工程に従って→印に示す順序で試験を行う。各ステップの試験の開始前に3時間以上当該試験温度に保持するものとし、各ステップ終了後、防水層の状態を目視により検査する。

(4)試験結果の表示

試験結果は下記の区分で表示する。

(a)A形試験体の場合

区分
疲労A1:工程1で1体でも破断した場合
疲労A2:工程2で1体でも破断した場合
疲労A3:工程3で1体でも破断した場合
疲労A4:工程3で3体とも破断しなかった場合

(b)B形試験体の場合

区分
疲労B1:工程1で1体でも破断した場合
疲労B2:工程2で1体でも破断した場合
疲労B3:工程2で3体とも破断しなかった場合

4.4 ジョイントずれ試験

(1)目的

防水層のジョイント部の損傷を評価する。

(2)試験体

試験体数:3

(3)試験方法

所定の養生を終えた試験体を、20±2℃の恒温室に24時間静置した後、ジョイント端部より10mm離れた位置に標線を引き、長さを1/4mmまで測定して標線間距離とする。次いで試験体を温度80±2℃の空気循環式恒温槽中に48時間静置する。そして試験体を温度0±2℃の低温恒温槽中に48時間静置し、さらに20±2℃の恒温室に72時間静置する。この80℃空気循環式恒温槽中から20℃恒温室に静置までの操作を1サイクルとして5サイクル繰り返して行う。終了後、20℃の恒温室で、標線間距離を測定して、ジョイントのずれ量を求めるとともに防水層の破損の有無を観察する。

(4)試験結果の表示

長手方向・幅方向の試験体各3体のジョイントのずれの最大値を測定し、各試験体のジョイントずれ量として表す。なお、長手方向・幅方向の所定のジョイント幅を併記する。さらに、目視観察の結果と合わせて下記の区分で表示する。

区分
ジョイントのずれ1:長手方向・幅方向おのおの3体のうち1体でもジョイント部の防水層に破断が生じたか、ジョイントずれ量が
ジョイント幅の5%を超えた場合
ジョイントのずれ2:長手方向・幅方向おのおの3体とも破損せず、ジョイントずれ量がジョイント幅の1~5%の場合
ジョイントのずれ3:長手方向・幅方向おのおの3体とも破損せず、ジョイントずれ量がジョイント幅の1%未満の場合

4.5 ずれ・垂れ試験

(1)目的

急勾配屋根およびパラペット立上り部などに施工する防水層のずれ・垂れに対する抵抗性を評価する。

(2)試験体

下地板は、特に指示のない場合は厚さ30mmのコンクリート板あるいは厚さ8mmのフレキシブル板とする。

試験体:押え金物ありの場合、防水層幅600mm、留付け間隔500mm
試験体数:3

(3)試験方法

試験体を温度60±2℃の空気循環式恒温槽中に垂直に設置し、168時間静置する。その後、防水層とのずれおよび防水層自体の垂れを観察する。ずれは、その最大値を1mm目盛りのスケールを使用し、測定する。

(4)試験結果の表示

試験結果は下記の区分で表示する。

区分
ずれ・垂れ1:3体のうち1体でも1mm以上のずれまたは垂れを生じた場合
ずれ・垂れ2:3体のうち1体でも1mm未満のずれまたは垂れを生じた場合
ずれ・垂れ3:3体とも異常が生じなかった場合

4.6 コーナー部安定性試験

(1)目的

防水層のコーナー部における安定性を評価する。

(2)試験体

試験体数:3

(3)試験方法

所定の養生を終えた試験体を、温度80±2℃の空気循環式恒温槽中に48時間静置する。次いで試験体を温度0±2℃の低温恒温槽中に48時間静置し、さらに20±2℃の恒温室に72時間静置する。この80℃空気循環式恒温槽中から20℃恒温室に静置までの操作を1サイクルとして5サイクル繰り返して行う。終了後、20℃の恒温室で、防水層のしわ、入隅部の引きつり、および破断の有無を観察する。

(4)試験結果の表示

試験結果は下記の区分で表示する。

区分
コーナー部安定性1:長手方向・幅方向おのおの3体のうち1体でも防水層の破断が生じた場合
コーナー部安定性2:長手方向・幅方向おのおの3体のうち1体でも防水層のしわ、入隅の引きつりが生じた場合
コーナー部安定性3:長手方向・幅方向おのおの3体とも異状が生じなかった場合

4.7 耐風試験

(1)目的

強風時の負荷に対する露出防水層の抵抗性を評価する。

(2)試験体

対象とする下地(特に指示のない場合は寸法1000×1000mm、厚さ100mmのコンクリート板)に仕様に従って試験体を制作し、所定の養生を行う。試験体には、その中央部に正確に100mmφの絶縁箇所を設けておく。試験体の数は1体とする。

(3)試験方法

図9に示す温度調整装置のついた減圧槽、圧力調節機および減圧機よりなる装置で、減圧槽は防水層にかぶせて槽内を減圧したとき、防水層と減圧槽の間から空気の流入を阻止できるものであること。

防水層の上に減圧槽をかぶせ、必要があればそのすきまをシールする。防水層の温度を40±2℃に保ち3時間以上経過した後、槽内の圧力を-2.0kPaに減圧して30分間保持し、負圧を保った状態で防水層の膨れ、はく離、破断、穴あきなどの異状の有無を観察する。特に、絶縁箇所の周辺の膨れ、はく離の進行状況を観察する。膨れ、はく離が振興しない場合は順次-5.0kPaで30分間、さらに-10.0kPaで30分間の負圧の状態で、防水層の異状の有無を観察する。

(4)試験結果の表示

試験結果は下記の区分で表示する。

区分
耐風1:-2.0kPaの負圧で30分までに異状を生じた場合
耐風2:-5.0kPaの負圧で30分までに異状を生じた場合
耐風3:-10.0kPaの負圧で30分までに異状を生じた場合
耐風4:-10.0kPaの負圧で異状を生じない場合

4.8 ふくれ試験

(1)目的

露出防水層のふくれに対する抵抗を評価する。

(2)試験体

試験体を試験温度60±2℃の状態に1時間以上静置する。その状態で図10の例に示す膨れ試験装置を設置し、まず5.0kPaの圧力を負荷し、絶縁箇所の輪郭を白インクなどでマークする。次に10.0kPaの加圧を負担し、絶縁箇所の輪郭を白インクなどでマークする。次に10.0kPaの加圧を10分間、さらに20.0kPaの加圧を10分間、そして50.0kPaの加圧を10分間、順次行い、絶縁箇所の拡大などの異状を観察する。

(3)試験結果の表示

試験結果は下記の区分で表示する。

区分
ふくれ1:1.0kPaの圧力で1体でも10分までに異状を生じた場合
ふくれ2:2.0kPaの圧力で1体でも10分までに異状を生じた場合
ふくれ3:50.0kPaの圧力で1体でも10分までに異状を生じた場合
ふくれ4:50.0kPaの圧力で3体とも異状を生じなかった場合