仕様と施工

シート防水による防水の改修

改修のポイント

1.改修工法でのシート防水の特徴

① 防水層が軽量で柔軟性を有しているため建物の軽量化がはかれ、異形屋根でも無理なく改修できる。

② シートが柔軟かつ、弾性があるため、駆体の挙動は勿論のこと、各種既存防水層の伸縮にも追従するので、各種既存防水層を撤去せずにそのままでも施工できる。

③ 必ずしも既存防水層を撤去する必要がないため、撤去廃材の発生が最小限に押さえられる。

④ 機械的固定工法及びセメントペーストによる接着工法では、下地が湿潤状態でも施工できる。また、機械的固定工法では特別な下地処理を必要としない。


2.改修工事のフローチャート

改修工事は既存屋根の現状把握を行い、構法の検討、工法の選定、下地の処理という段階を経て防水施工に入る。その過程は、次のようになる。


3.改修構法の検討

改修工法を選定する場合、保護層、既存防水層を撤去する場合と撤去しない場合があり、既存防水層の取扱いを分類し、次にまとめた。


4.下地処理

改修工事での重要な要件は下地処理をいかに行うかということであり、十分な現地診断が必要となる。表1は3に記載した8種類の下地状態における下地処理方法を、新設防水層が接着工法や機械的固定工法で行われる場合についてまとめた。

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表1 既存下地の処理方法
構法 下地処理 新設防水工法
接着 機械
NO.1
保護層を残す
  • 保護層の浮上り部分は撤去する
  • モルタル・コンクリートの欠損部は、ポリマーセメントモルタルで補修する
  • モルタル・コンクリートの表面が著しく粗面で脆弱化してシートの接着力が保持できない下地に対しては、下地調整材を全面塗布する
  • 伸縮目地部に注入されたアスファルトの表層には不定形シール材などを充填する
  • 伸縮目地部を脱気用通路に利用する場合は、バックアップ材を詰めてから通気テープを張り付ける
  • 機械的固定工法を採用する場合は、保護層の強度を確認し、アンカーの固定条件を決める
 
  • ひび割れが2mm以上の場合は、Uカットし、ポリウレタン系シール材などを充填する
NO.2
防水層を残す
  • 下地調整材を用いて平滑にする
  • 防水層にふくれ、浮きなどの不良部分がある場合は撤去する
  • 撤去した部分は、ポリマーセメントモルタルを用い段差がないように仕上げる
NO.3
防水層を撤去する
  • ケレン作業を行い、突起物、下地への付着物などをできるだけ取り除く
  • ひび割れが2mm以上の場合は、Uカットし、ポリウレタン系シール材などを充填する
  • 下地調整材を用いて平滑にする
NO.4
アスファルト防水層を残す
  • 下地調整材を用いて平滑にする
  • 防水層にふくれ、浮きなどの不良部分がある場合は撤去する
  • 撤去した部分は、ポリマーセメントモルタルを用い段差がないように仕上げる
  • 立上り部分は、特に浮きが発生していることが多いため撤去するのが望ましい
NO.5
合成ゴムシート防水層を残す
  • 表面に付着している汚れ、砂などの異物は、水洗などで取り除く
  • 防水層の浮き、はがれ部分は切開して取り除くか、接着剤を用いて張り付ける
  • 立上り部分は、特に浮きが発生していることが多いため撤去するのが望ましい
  • プライマー又は、下地調整材を用い、表面処理を行う
NO.6
塩化ビニルシートを残す
  • 表面に付着している汚れ、砂などの異物は、水洗などで取り除く
  • 防水層の浮き、はがれ部分は切開して取り除くか、接着剤を用いて張り付ける
  • 部分的に撤去する場合は、ポリマーセメントモルタルを用い、段差がないように仕上げる
  • 立上り部分は、特に浮きが発生していることが多いため撤去するのが望ましい
  • プライマー又は、下地調整材を用い、表面処理を行う
NO.7
塗膜防水層を残す
  • 表面に付着している汚れ、砂などの異物は、水洗などで取り除く
  • 防水層の浮き、はがれ部分は撤去する
  • 部分的に撤去する場合は、ポリマーセメントモルタルを用い、段差がないように仕上げる
  • プライマー又は、下地調整材を用い、表面処理を行う
NO.8
防水層を撤去する
  • ケレン作業を行い、突起物、下地への付着物などをできるだけ取り除く
  • ひび割れが2mm以上の場合は、Uカットし、ポリウレタン系シール材などを充填する
  • 下地調整材を用いて平滑にする