仕様と施工

シート防水工事に係わる法令、基準など

シート防水の耐風圧性能

屋根面に風が吹くと、屋根を持ち上げようとする力(負圧力)が働きます。シート防水工法では、台風時などでも防水層が飛ばされないないように考慮された工法が確立されています。

平成12年6月1日施行の新建築基準法により、風荷重の計算方法が変更になりました。長年にわたる気象観測、また風洞実験などによって蓄積されたデーターにより、風が建築物に与える影響をより正確に把握されるようになり、建物形状、地域の状況など、詳細な条件設定が可能になり、より実状に即した計算方法に改正されました。


主な改正点

(1)従来、全国一律に定められていた速度圧を、各地域における風速及び市街化の状況を考慮して算定される方法に改められました。

(2)風力係数は、風洞実験の結果に基づくか建設大臣が定める値に改められる。

(3)風圧力の単位を(Kgf/m2)から(N/m2)に改められました。


風圧力の計算式

建築基準法施行令第82条の5の規程に基づき「屋根ふき材及び野外に面する帳壁の風圧に対する構造体力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」(平成12年5月31日旧建築省告示第1458号)により算出します。
なお、同告示に基づき屋根ふき材に加わる風圧力の計算例を次に示します。


[風圧力N/m2:W]=[平均速度圧N/m2:q]×[ピーク風圧計数:Cf
  • [平均速度圧]q=0.6Er2×V02
  • Er=平均風速の高さ方向の分布を表す係数
    V0=基準平均風速

Erは次式により算出します。

  • HがZb以下の場合
    HがZbを超える場合
  • Er=1.7(Zb/ZG)a
    Er=1.7(H/ZG)a

Er、Zb、ZG、Hはそれぞれ次の数値を表します。

粗度区分 Zb(m) ZG(m) a
I 5 250 0.10
II 5 350 0.15
III 5 450 0.20
IV 10 550 0.27
H:建物の高さと軒の高さとの平均(m)

[ピーク風力係数:Cf]=(屋根面のピーク外圧係数)-(屋根面のピーク内圧係数) 陸屋根の場合、勾配(角度):θ≒0(正確には10度未満)のため、正のピーク外圧係数による計算は省略します。
負のピーク外圧係数に対する閉鎖型の建築物のピーク内圧係数は0となります。
また、負圧による影響以外に風の吹き込み対策が必要であり、シート結合部、雨仕舞部納まり、板状下地材の目地処理などの適切な処理、室内正圧を考慮した下地への接着(固定)強度の確保といった設計・材料・施工面からの検討が重要であり、メーカーの仕様を確認することが必要です。
一般的な屋根で、建物高さ20m、地表面粗度区分、基準平均風速36mの場合の風圧力を下表に示します。

  • Er=0.912    Cf

     

    V0=36/s

  • Aの部位:-2.5

    Bの部位:-3.2

    Cの部位:-4.3



(注):平面の短辺長さとHの2倍の数値の内いずれか小さい値
(30を超えるときは、30とする。)(単位:m)
図 陸屋根面の部位位置
部位 風圧力(N/m2)
 の部位 1,618
 の部位 2,070
 の部位 2,782
シート防水工法は、主として接着工法と機械的固定工法がありますが、屋根のどの部位においても、上記風圧力の基準を満足できるように、接着力、固定力を決定する必要があります。

(1)接着工法
一般的に98,000N/m2(9.8N/cm2)以上の接着力があるため、どの部位においても十分に安全であります。

(2)機械的固定工法
固定金具の下地への固定強度(防水層の固定強度)を2,000N/箇所の場合、単位面積当たりの固定金具の必要量を計算すると次のようになります。

 の部位:1,618÷2,000=0.8(本/m2

 の部位:2,070÷2,000=1.0(本/m2

 の部位:2,782÷2,000=1.4(本/m2


KRK標準工法では、固定金具の必要量は1.1~2.8本/m2と規定していますが、上記計算例では約2倍の安全率になります。計算例以上の条件下では強度の出る固定金具を使用したり、固定金具の単位面積当たりの使用量を増やすなどして安全対策を施す必要があります。


引用文献:国土交通省「建築工事監理指針」